【「たかこさんと結婚させてください」そう言って父に頭を下げたのは義母だった】
たかこさんと結婚させてください。
そう言って父に頭を下げたのは義母だった。
父は大阪の下町で小さな会社を経営するワンマン社長。昔流行ったテレビドラマ、寺内貫太郎によく似た、迫力のある人だ。
この結婚には父も母も反対だった。
理由は彼がバツイチだから。
離婚の経緯は、彼ではなく彼の母親から身振り手振り付きで詳しく聞いていた。
学生時代から付き合っていた彼女と結婚したのは20代の頃。ある日彼が長期出張から戻ってきたら、冷蔵庫以外の家財道具と一緒に、彼女は消えていたらしい。マンガみたい。
これまでにニ度、彼は結婚の挨拶に来ているが、父の迫力に負けたのか結局何も言えず、ご飯だけ食べて帰って行った。
そして3回目、義母は愛犬ヨークシャーテリアのピカソと彼を引き連れて、颯爽と我が家にやってきた。
「もう、さとしに任せていたら話が前に進まないので私が来ました。
たかこさんと結婚させてやってください。
さとしは、優しい子です。
……
たかこさんを悲しませるようなことはしません。
安心してください。ピカソは働きものです。…」
途中から、さとしがピカソに変わっていたが、義母のプレゼンは続いた。
義母の迫力にやられたのか、父は私とピカソとの結婚を承諾してしまった。
義母はユニークな人だった。
このユニークさは、結婚後もいかんなく発揮された。
一番困ったのは、私の実家へ行きたがったこと。
義母とは二世帯住宅の上と下に住んでいた。義母の生活スペースは1階。でも、義母の寝室は2階にあるため、私たちは毎朝毎晩顔を合わせている。
それなのに、私たちがゴールデンウィークやお盆に、私の実家へ行こうとするとついてくる。
大阪の実家に行く準備をして車に乗ろうとすると、すでに助手席に座って待っているのだ。
「たかこさんの大阪の実家、好きやねん。
お父さんもお母さんも弟さんもお嫁さんも、みんな面白いから」
つづく
以上の出来事を、マナーの観点から考察します。
1、言いにくいことこそ、先に言ってしまおう。
特に結婚の挨拶など、人生における大切なタイミングを人任せにしてはいけない。
でないと、何かあるごとに、一生言われ続けてしまう可能性がある。
2、人の名前は間違えないようにしましょう。
3、熱いパッションは人を動かす。
今日はこのへんで。